日本人の9割が知らない遺伝の真実 安藤寿康(じゅこう)
本書の’はじめに’の部分から引用しますと、
最初にお断りしますが、これは当たり前のことを当たり前に書いた本です。みなさんがうすうす当たり前と感じながら、それに科学的根拠があることをあまり知らされていないので、それがほんとうに科学的に当たり前であることを伝えたかったから。 (引用終わり)
そう、当たり前な内容なんですが、科学的裏付けを見ると、やっぱり、と思う本でした。
貧乏な家に生まれたら、あきらめるしかない?
本書では、「貧しい家庭でも知的な活動が行えるような補助を行うことで、子どもの遺伝的な知的才能を発現させるチャンスを増やせる可能性がある」
という、しごく当たり前な結論になっています。しかしそれをするには、親が知的活動を子供に教えることができ、知的活動ができる環境を用意する必要があるということ。子どもの知的好奇心を伸ばすのに、必ずしもお金は必要ではないと私は思っています。
むしろ、遺伝的才能があるかどうかも不明なのに、習い事などで知的活動を他人に丸投げしてしまうことが危ういとも思っています。でもそういう親をターゲットにした、幼児の早期教育ビジネスが花盛りな現実がありますね。
収入と遺伝に関係があるか?
なかなか興味深いテーマでした。収入への遺伝と環境の影響というグラフがあったのですが、そのグラフ、日本人20~60歳 双生児1000人の男性のデータでは
収入の個人差に影響を与えているものが、
20歳の時は、共有環境の影響が70%、遺伝20%、非共有環境が約10%だったのが、
45歳時 共有環境の影響がほぼ0%、遺伝60% 非共有環境が40%になっています。
初めの就職口は親族のコネやつて、助言などが収入に影響を与えるが、親の七光りが薄れて、独り立ちして実力が問われるようになった45歳くらいの時には、その人自身の遺伝の影響が強くなる。
しかし、これは男性に限った統計です。
女性については、既婚、未婚を問わず、収入に対しての遺伝の影響はほぼゼロのままという、驚くべき結果でした。遺伝の影響がゼロということは、女性は自分の潜在能力がまったく収入に反映されない。
と本書にはありました。
女性の収入は、職種や配偶者や家族構成や居住地域など、環境や状況によって働き方が様々なので、双生児1000人程度では結論を出せるほどのデータが揃わないのではないかと個人的にはと思いました。2013年のデータなので、また最新のデータでは状況が違うかもしれません。
男性の若いうちは、親や親族などの環境の影響が強くでます。中年以降は遺伝の影響が出てくるということは、やっぱり収入と遺伝に関係がある、という結論になりますね。女性は残念ながら結論が出ていません。
子どもの学力を向上させ才能を伸ばす7つの方法
https://nanten505.seesaa.net/article/202006article_1.html
↑お茶の水女子大学による文部科学省の委託研究、「全国学力・学習状況調査の結果、学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」と
いうレポートを元にした分かりやすいサイトの紹介の過去記事です。

日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書) - 安藤 寿康

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ラベル:本