期待せずに原作を読んだら、余りの面白さに驚きました。 映画よりはるかに面白かった。 結末は解っているのに、ストーリーの先の描写がすごく気になる。 作者の力量は流石です。 500ページ近い長編ですが一気に2日で読破してしまいました。
小説あらすじ (「BOOK」データベースより)
故郷に戻り、深夜バスの運転手として働く利一。子供たちも独立し、恋人との将来を考え始めた矢先、バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。会社を辞めた長男、結婚と仕事で揺れる長女。人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。バスの乗客の人間模様を絡めながら、家族の再出発を描いた作品。
映画のレビューで原作を絶賛していた人がいたので、原作を買ってみたら文庫なのに千円近い。ハズレたら嫌だなと思いながら読んでみたら、あの映画は原作を忠実に再現していたのだなと今更ながら理解しました。
この小説は、人の弱さを描いた作品なんだ。 ちょっと精神的に病んだ人達の群像劇なんだというのが映画を見た時には分からなかったんです。 小説で理解できました。 でも結末は、それぞれの登場人物の再生。 特に主人公リイチの家族の再生が描かれていて、救いがあります。
たんたんと過ぎる平穏と思えた日々がある時まとめて脆く崩れる。大きな出来事やストーリーの起伏はないのに、人物の心情が柔らかい文体できめ細かく、リアリティを持って描かれています。 小説の方が描写が丁寧で細やかなので、喜び、悲しみ、不安、別れ、涙、無言のうつむきなど、登場人物の全ての感情を読み手が共有できます。 ラストに感動、というより、作者の語り方の巧みさに私の気持ちも引き込まれた作品でした。
人の弱さが描かれている、といっても、やはり主人公の言動は無責任ですし、主人公に限らず、登場人物がみな小説の方がより自己中に描かれているかも。 でも全員悪意を持ってしている言動ではなく、素直になれないというか歯車がかみ合わないというか、「やむを得ず」感が小説ではきちんと説明できているように思えました。
群像劇というか、本当に描かれた人物の人数が多すぎて冗長すぎるきらいはありますが、私はそんなに嫌ではなかったです。映画で描かれていない人たちの結末もすごく気になりましたし。 でもまあ、なくても良かったかな、というエピソードもあったんですが。
また映画が見たくなったんですが、一月下旬封切でゴールデンウィーク前までやっていたのですが、新潟でもさすがにロードショーは終わってしまいました。 残念。レンタルが出たら見ることにします。
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ラベル:本