2023年05月15日

人はどう死ぬのか 久坂部 羊 著

 在宅診療医師兼作家の久坂部羊氏が、安らかな死を迎えるために私たちが知っておいたほうが良いことを解説してくれたエッセイです。普通の人だと看取りは家族の人数くらいですが、やはり何年も何十人も看取ってきた医師の経験は参考になります。

 医師に人気の死因、一位はがんだそうです。本人にとっても、周りも死期の目途がたつのが一番の理由だそう。消去法の結果だそうですが。

 ぽっくり死にあたる、脳梗塞、心筋梗塞、くも膜下出血は発作の時に、激烈な痛みを感じるらしい。苦しむ時間は短時間とは限らないし、くも膜下出血は金属バットで頭を殴られるような痛みといいます。痛みの持続時間や強弱は個人差があるでしょうが。

 老衰死も人気がありそうですが、死ぬまでが、かなり大変。目耳鼻味覚の感覚はなくなり、関節痛に耐え、心不全と筋力低下で体も動かせなくなり、呼吸も苦しい。その時間も個人差があるのが老衰。一日や半日くらいで老衰死ができればいいのでしょうけど。

 がんで死ぬときに大事なのは、無理に治ろうとしない。がんと共存していく。ほどほどの治療で様子をみて、効果より副作用の方が大きくなったら潔く治療をやめるのが、癌治療の要諦です。

 あらかじめ自分の死に注文をつけず、虚心坦懐にあるがままを受け入れ、最後に自分の人生の肯定と感謝を感じるのがいい死に方のコツなのではないか。

 超高齢や末期がんの人は、自宅で意識がなくなっても、救急車を呼ばない方が、本人は楽に死ねるケースが多いとのこと。救急車を呼んでしまうと、車内や病院で苦しい延命措置をされてしまうから。けれども、自分本人はともかく、家族が意識不明の時に、救急車を呼ばない選択は難しいと私は感じます。

人はどう死ぬのか (講談社現代新書) - 久坂部羊
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posted by ひろん at 18:42| Comment(0) | 生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年05月08日

サピエンス全史(2)ユヴァル・ノア・ハラリ 虚構を信じる私たち

 世界中の人が一つの神話や宗教を信じているわけではありませんが、(以下引用)現代に生きる私たちも、お金の価値(信用)や会社の価値や存在を信じなかったら、国際的な貿易ネットワークは崩壊するでしょう。国家の価値や存在を信じでいなかったら誰も税金を納めないし、そうなったら全国的な教育や医療制度なんかなりたたないわ。

 でも忘れちゃいけないのは、虚構はただの道具だってことよ。人が使って便利なように考え出されたものだってこと。道具の奴隷になってはいけないわ。

 マンガのキャラクターが女性なので女性言葉になっていますが、ユヴァル氏の言葉はなかなか深いですね。国家や貨幣経済などの虚構の世界に無意識に生きている私たちに大事なことを教えてくれている気がします。

 霊長類の家族の在り方をヒヒ、ゴリラ、オランウータン、チンパンジー、コモン・チンパンジー、ボノボと例をあげてくれています。私はホモサピエンスがチンパンジーとボノボの遺伝子を色濃く持っている合いの子だと思っていたので面白いです。

 チンパンジーは、群れを作って共同体で暮らしている。夫婦関係は長続きしません。子どもは母にくっついて育ちますけど、たいてい誰が父親だか誰も(母親自身も)わかっていません。

ボノボは雌どうしがとても仲良しで、セックスまでします。助け合って子育てもするし、群れのボスも雌です。

 現代の人間の夫婦に不倫が多かったり離婚率が高いのはなぜか、核家族や一夫一婦制になじめない人がいるのはそれらの遺伝子のせいなのではないでしょうか?

 集合的にみれば、現代社会の知識量は石器時代の共同体を大きく凌駕しています。でも個人レベルで言ったら、歴史上いちばん知識や技能が豊かなのは、昔の狩猟採集民なんですよ。地理や動物や植物や鉱物をを熟知し、衣服も家も道具も自分で作れた人々です。(引用終了) ユヴァルさんのこの言葉が、私が縄文時代に惹かれるポイントなんです。

今日の過去記事は、縄文人の美味しい食卓
https://nanten505.seesaa.net/article/202204article_6.html



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posted by ひろん at 17:02| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年05月06日

サピエンス全史(1)ユヴァル・ノア・ハラリ

 読んでみたかった本ですが、マンガがあるのを知り、マンガを先に読んでみました。私の好きなNHK BSのドキュメンタリーヒューマニエンスで分かりやすく解説してくれていた知識がほとんどでした。まあ多分、番組の方がこの本にインスパイアされて作られているのでしょう。

 ヒューマニエンスの知識を分かりやすくテーマ別にまとめてくれている印象でしたが、私にとって意外な発見もいくつかありました。

 人類(サピエンスだけではない)が、火を使えるようになってからもしばらくは、絶滅スレスレの動物だったことです。15万年前の人の化石の歯と顎と頭蓋骨の大きさが、現代人とほぼ変わらないことで、火を使った調理のおかげで進化していたと推測される。でも15万年前の時点で、全人類の個体数の推測が約100万人、サピエンスはその十分の一の10万人だった。

 しかし7万年前に、サピエンスの認知能力に革命が起きた。おそらく脳の遺伝子に何か変化が起こったのだろう。他人といろんなことで協力できるコミュニケーション能力を手に入れた。そしてホモサピエンスはアフリカを出て、世界各地へ進出していった。

 ヒューマニエンスの番組で、7万年前、矢柄と継ぎ柄と矢じりをそれぞれ繋ぐのに、樹脂に顔料を混ぜた接着剤が使われていた。これは武器を作るための言葉がその時点で存在していた証明になる。

 弓矢という武器を手に入れたサピエンスは、狩りの能力が飛躍的に上がったので、アフリカを出ることが可能になったのではないでしょうか。そういった番組で得た知識がこのマンガに繋がっていくのが面白かったです。

 番組内でもマイルドに触れられていましたが、ユヴァル氏は、言語がそもそも、人のうわさ話を何時間もするために発達した、と主張していて、事実なら人類の性(サガ)って辛辣だなあ、と感じます。

 誰が信用できるかという確かな情報があれば、群れの規模を拡大できる。それでサピエンスは、より緊密で高度な協力関係を築けるようになったとのことです。それは信用できない人間の排除も、7万年前からあったということですね。 

 マンガの絵はフランス人の人が書いたらしく、タッチが粗く、外国の新聞の風刺画のようです。キャラクターが男か女か、性別もぱっと見でわからないキャラも多く、好みの絵柄ではありませんでしたが、脚本も練られていて、やはり文章より分かりやすい。

ヒューマニエンス 言葉 それがヒトの思考を生んだ
https://nanten505.seesaa.net/article/498204396.html

漫画 サピエンス全史 人類の誕生編 - ダヴィッド・ヴァンデルムーレン, ダニエル・カザナヴ, 安原和見, ユヴァル・ノア・ハラリ
漫画 サピエンス全史 人類の誕生編 - ダヴィッド・ヴァンデルムーレン, ダニエル・カザナヴ, 安原和見, ユヴァル・ノア・ハラリ


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posted by ひろん at 07:42| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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