小関氏自身の自伝と、町工場で働くたくさんの職人たちの生きる姿と、ものをつくる喜びと働くことの意味が心を込めてエッセイ風に描かれています。 1999年初版。小関氏は1933年生まれ。中学校の図書だよりで紹介されていた本です。 もともと若い人たち向けに工場でものづくりをする人達の姿を伝えてほしいと書かれた岩波ジュニア文庫ですが、大人が読んでもしみじみとした味わいがあります。
引用
機械がどんなに進歩したって人間の手と頭こそが最高の制御装置なんだ。そうでなければ人間なんて木の枝にあの見事な巣を張る一匹の蜘蛛にも劣るじゃないですか。
つまらない仕事というものはない。仕事をつまらなくする人間がいるだけである。 仕事が味気ないのではない。味気なく仕事をするから、楽しくないだけである。
どうせ一日、同じ8時間働くんなら、ふてくされてやってるより、楽しく働いたほうがいいに決まってるじゃないですか。
最初の言葉は、小関氏の座右の銘だそうです。 工場の中の機械や稼働の様子などは専門用語が飛び交い、素人にはイメージできないものもあってちょっと読みづらいのですが、過ぎし日の昭和のノスタルジックなのんびりとした町工場の風景や、コンピューター制御の機械の登場で去らねばならなくなる職人の悲哀なども描かれています。
小関氏自身も見習工から始まって旋盤工になり二十数年、44歳の時、親会社の合併で工場の閉鎖のため職を失い、たいへん苦労して最新型の機械を学んだご苦労が淡々と描かれています。1970年代、当時は素人がコンピューターの制御の機械で部品を作るプログラムを自分で書かなければならなかったというお話が描かれていてえらく驚きました。
若者向けの著作なので、全体的に明るく昭和の町工場史が1999年当時まで綴られています。 職人(匠)たちの言葉は味わい深い名言・至言がたくさんありました。
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ラベル:本